好きになれない

 

 

 好きになれない。

 どうしても。

 鳥口守彦。

 

 

 食事に行くといつもそう。

 メニューを決めるのも食べるのも異常に早くて、

 僕が吟味を重ねて選んだご飯を必ず途中で掻っ攫うんだ。

 しかも自分で手を出すことはせず、

 「一口ちょうだい」なんて言って、

 僕が口許まで運んでやるのを嬉しそうに待っている。

 

 

 電車に乗るといつもそう。

 混雑してくると僕を扉横の手摺り際に立たせて、

 他の人から僕を守るように君が立つ。

 僕は女の子じゃない。そんなことをして貰う必要はない。

 なのに、ほら

 恥ずかしいと思いながらも、

 緩む頬を止められない。

 

 

 顔を合わせるといつもそう。

 君は嬉しそうに笑って、

 僕の頭を掻き回す。

 ねぇ、

 止めてよ。

 髪が乱れるじゃないか。

 君が綺麗だと言ってくれたから、

 君が好きだと言ってくれたから、

 これでも気を遣って手入れして、

 朝からちゃんと梳かしてるんだ。

 僕に触れたいなら髪じゃなく、

 もっとちゃんと触ってよ。

 

 

 好きになれない。

 どうしても。

 鳥口くんを好きすぎる、

 恥ずかし過ぎるこんな僕。

 

 

2008/11/22 up

恥ずかしすぎる…ッ!!!